「自分の指を衿元に充てて、指標(クリップ等)も外すとすぐに規定外になってしまう…」
今回は、1級着付け技能士の実技試験において、非常に厳格に定められている「寸法」を、本番でどうやって正確に測り、規定内に収めるかというお話です。
メジャーも「目盛り付きクリップ」も失格対象!
まずは、毎度おなじみの注意事項から抜粋します。
【2】注意事項
(7)試験中は、アラーム類及びメジャー類(目盛付きクリップの目盛部分なども含む)は、原則として失格となる。【3】仕様(寸法の目安)
・半衿の出具合は、衿合わせの中心で2cm〜2.5cmを目安とする。
・おはしょりの長さは、5cm〜8cmを目安とする。
・垂れの長さは、8cm〜11cmを目安とする。
まだ受検対策を始めたばかりの頃、すでに受検経験がある方から「寸法が決まっているから、クリップのこの部分で何センチとか、自分でわかる基準を作ったりしたよ」というようなお話を耳にしました。
それを聞いた当時の私は、「それは、なんぞや??」と、ちっとも具体的なイメージが浮かびませんでした。
では、メジャーが使えない本番で、私が採用した「自分オリジナルの寸法の基準」となるものは何だったのか。クリップなどの持参品ではなく、自分自身の『手指』一択としました。
寸法指定がある3点について、私が具体的に基準とした写真とともに解説します。
私が実践した「手指」の寸法基準
なぜ手指を採用したのか?深い理由はありません。人生で初めて通った着付け教室で、自装の練習をした際「衿合わせは鏡を見なくても、自分の人差し指の第一関節で確認できるわよ」と教わったからです。それをそのまま、ずぅっと持ち越して今に至ります。
① 衿合わせ(規定:2cm〜2.5cm)

衿合わせの出具合は、「人差し指の第一関節」を基準にしました。
合格した今だから言えますが、この衿合わせ時の指の第一関節ルール、決して軽んじてはいけません。練習を重ねるにつれ、「2cmギリギリがいつの間にか2cm未満になる」「逆に2.5cmをオーバーしてしまう」という自分の癖を自覚していきました。
最初の衿合わせでしっかり確認するのはもちろんですが、胸紐を結ぶ際や、伊達巻を巻き終える際など、動作の直後には注視し、油断できない箇所として意識しました。
② おはしょりの長さ(規定:5cm〜8cm)

おはしょりの長さは、「左手の真ん中3本(人差し指・中指・薬指)」を採用しました。
私のこの3本の幅はちょうど5cm。「最低でもこれだけは絶対に確保しなければいけない」という下限の基準としました。そして「指4本の幅」は7cmになるため、規定の8cmをオーバーしないための上限の基準としました。
③ 垂れの長さ(規定:8cm〜11cm)

垂れの長さは、「指5本(手の幅全体)」を基準として採用しました。
私の手幅は概ね8cm〜9cmの間です。規定の8cmに対してギリギリの寸法になるため、絶対にこれを下回らないように注視しました。
手指を基準にする際の「危険な落とし穴」
自分の手指を採用するにあたって「危険だな」と感じたのは、日によって手がむくんでいる時があることです。大きな誤差はなくとも、練習時に狙った寸法から微妙にズレてしまう日もありました。
だからこそ、本番の受検時にブレのない確実な基準となるよう、日々の練習で「着姿には必ずメジャーを当てて実寸を計測する」ことを徹底しました。
私が特に不得手とし、誤差が出やすかったポイントは以下の通りです。
- 衿合わせ: 半衿に続いて重ねる伊達衿の出具合が均一でなければないほど、アラが際立ち、規定寸法を下回る(または上回る)恐れがありました。
- おはしょり: 体の中心(真ん中)の長さは良くても、左右に向かって寸法が狂う恐れがありました。ですので、まるっと輪切りにしたように、どこから見ても真っ直ぐな同じ長さのおはしょりを目指しました。
- 垂れの長さ: これも真ん中は良くても、左右で寸法が狂う恐れがありました。のちに続く帯締めとの兼ね合いもあるため、シワを伸ばす手の動きと合わせて、基準寸法に収まっているかを意識づけるようにしました。
【おまけ】公式図解から読み解いた「裏ヒント」
最後に、注意事項の文章には載っていないけれど、私が図解からヒントを得た「基準寸法」のお話をします。公式発表されていない事柄ですので、あくまで一合格者が採用した独自の見解として、流し読み程度にお受け取りください。
注意事項のP3~4に寸法の参照図が掲載されています。ヒントになったのは、そのP4『中振袖(後)』の図、衿と帯の間隔です。
背中心付近の衿幅と、その下にくる帯の上線までの間隔。これが、「ほぼ同じ幅」のようにバランス良く整って描かれていたのです。
実際に図にスケールを当ててみると、ほぼ同幅でした(あくまで図上の話であり、生身の実技では異なる認識です)。
しかし、後ろ姿で求められる「客観的な綺麗さ」とは、こういうバランスであって欲しいというメッセージかもと、私の中では大きなヒントになりました。ふくら雀の羽の位置や箱ひだの幅なども同様です。
初めて受検に向き合った際、対策講座の先生が「この図の通りにすれば受かる」というような事柄を仰っていたのが頭の片隅にありました。情報が少ない中、絶対の完成形は注意事項の図のみです。
私は、ネット上で合格された方々の写真を参考にしつつも、ブレない完成形の指針は「注意事項の図」に置きました。
おわりに:測る所作も「美しく、自然に」
最後にもう一つ大切なポイントを添えさせていただきます。
本番中、寸法を確認する所作は、最終的に「客観的に見て、測っていることが自然な行いの流れに組み込まれている」ように見せる必要があります。不安だからといって、手でペタペタと頻繁に触って測りすぎるのはおすすめしません。日々の練習で、自然な動作の中でサッと確認できる感覚を養ってくださいね。
ご参考になれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございます。

