1級着付け技能士の実技試験に向けて、道具の準備を進める皆様。今回は「長襦袢(ながじゅばん)の事前準備」についてのお話です。
「衿とじってどのくらい縫えばいいの?」「モデルさんとサイズが合わなくて、着物からはみ出ちゃう…」といったお悩みを抱えていませんか?
今回は、お裁縫が大の苦手で面倒くさがり(ずぼら)な私が、不合格の猛省を経て「これだけはやっておいて良かった!」と痛感した長襦袢の仕込みについてお伝えします。
※ここでお伝えする内容に限らず一貫している事ですが、私がこちらで記事にしている内容は全て、2回の実際の受検時に検定委員の先生から注意や指摘を受けていない事項になります。
なので、「これでいいのかな?」「これは注意されてしまうものなのかな?」と迷われた際の、一つの線引きとしてご参照いただければと存じます。
古い長襦袢、シミがあっても大丈夫?
まずは『よくある質問』からの抜粋です。
Q.長襦袢の色、柄は指定がありますか?
A.色、柄、素材は自由です。
「自由」とありましたので、私は実家にあった40年ほど前の振袖と、そのセットの長襦袢を使用しました。
もちろん事前に丸洗いクリーニングとほつれ補修を行ってから受検に臨みましたが、歴が長いためシミは完全には落としきれませんでした。それでも、本番で指摘されることはありませんでした。
【要注意】「紐通し」は即外し!点検時のたたみ方
次に、絶対に見落としてはいけない注意事項です。
『受検者持参品(礼装用であること)』にはこう記されています。
長襦袢 数:1 種類:衿は、広衿、ばち衿又は棒衿。ツーピースは失格。衣文抜き、紐通し付、紐付は不可。
実は私が当初採用した長襦袢には、背側に「紐通し」が付いていました。自装の練習用に、若かりし頃の私が自らミシンでしっかり目に縫い付けたものです。
「どれだけ強力な長襦袢着付けをしていたんだろう…」と遠い目をしてしまいたくなる現実でしたが、これは規定違反になるため即外しです!
試験開始前の『持参品及び服装の点検』では、長襦袢の置き方にも指定があります。
『持参品及び服装の点検のための準備』の際には(中略)長襦袢はたたみ、背側が見えるように置き、(以下略)

(↑ 実際の点検時はこのように背側が見えるように置きます。紐通しや衣紋抜きがないかチェックされます)
外した跡も綺麗にクリーニング・補修してもらい、難なき状態で点検をクリアできました。
「衿とじ」はどこまで縫う?
続いて『注意事項』の抜粋です。
長襦袢の衿とじは、会場入りの前に済ませてくること(衿芯はいれてきてもよい。会場で針の使用はできない。)
当初、私はこの「衿とじ」をどの程度縫えばいいのか見当がつかず、衿とじ無しのまま対策講座に通っていました。紙の衿芯を使用することも検討していた迷走時。不合格への布石は、このあたりでもチラ見えしていた頃でございます。
不合格を経ての対策講座で「衿とじはしないの?」と指摘を受け、先生から具体的な箇所を伺い、すぐにお裁縫を実行しました。


(↑ 実際に私が糸と針で縫った「衿とじ」の箇所です)
糸と針をつかって、お裁縫しました。
対策講座の先生的には、つってしまう恐れもある為「こんなにとじなくて良い」レベルだそうですが、私的には、この内容で本番も『〇』でした。
確かに、先生が懸念されていたように、幾度となく練習する中で引っ張り圧等が重なり、衿とじの縫い箇所が少し開いてきた時は、やばさを感じました。
心に漂う思いは、「半衿交換代も4,950円かかるし、めったにしないお裁縫のハードルも高いし・・・・」と。
お気づきでしょうが、基本的に私はずぼらです。面倒な事が大嫌いです。
大嫌いですが、「やっただけの価値がある」と、大嫌いな事にも真摯に向き合いました検定準備でございます。
【不合格年の猛省】長襦袢がはみ出る悲劇と「肩上げ」
長襦袢について、もう一つ重要なQ&Aがあります。
Q.長襦袢の袖、裾をモデルの身長に合わせて事前に縫っていくことは良いですか?
A.事前に縫ってくることは可です。
可なのです。失敗例として猛省しきりの不合格年の着姿を参考としてのせます。完成形なのに、明らかにモデルの手付近に、着物から長襦袢がはみ出ていますよね。完成形であるはずなのに・・・あってはならない失敗例として眺めていただければです。

そこで合格した年は、新たにお裁縫を追加しました。『肩上げ』です。

(↑ 対策講座の先生のアドバイスで縫った箇所です)
お裁縫が不出来な私は、最初「外側」に縫い目が来るように肩をつまんで縫ってしまいましたが、先生から「それだと目立つから、内側が良いですよ」と具体的にご提案いただき、内側に縫い直しました。
これで、袖口からはみ出る問題はクリアできました。
究極の一手!しっかり着付けた長襦袢を「あえて崩す」
肩上げで袖口はなんとかなりましたが、どうしても着物の振りと、長襦袢の振りが合いづらく、そして「着物の振り(後ろ姿)」から長襦袢が見えてしまうかも問題が残りました。対策講座の先生からもご指摘ありましたので、これは絶対に宜しくない状況です。
実は不合格年を経て、お着物だけ変更したのです。購入時に詳細のサイズ確認をし、「調整がつくだろう」と見込んでの変更でしたが……見込みは甘かったですね。
着物の振りと長襦袢の振りが合っていない、着物の振りからはみ出るモデル後ろ姿時の長襦袢の見え方。決して宜しくありません。
新しく買いなおすべきか。むやみやたらにフリマサイトを閲覧しては、「サイズがいまいち」と嘆いた時期であります。
そう、適切なサイズを探そうとすると、なかなか遭遇率も低く、更に単価も高めになります。
そんな風にフリマサイトを彷徨っていた時、対策講座の先生から苦肉の策として、あるご提案をいただきました。
「お着物をモデルに羽織らせてから、長襦袢の身頃(みやつ口付近)を少し引き出してみるのはどうかしら?」
それはつまり、シワなく綺麗に完成させたはずの長襦袢着付けを、着物を着せる段階で「あえて崩す」という一手でした。
当初の私は、しっかり作り上げた土台(長襦袢)を崩すなんて発想は持ち合わせていませんでした。しかし、目指すべきは「モデルの体型に沿う、着物と長襦袢の美しい完成形」です。完成時に長襦袢がはみ出ているという展開だけは、絶対に避けなければならないミッションでした。
広い意味合いで『得るは捨つるにあり』といった具合でしょうか。
同時に『立ち位置が変われば、そこから見える景色も変わる』という言葉が頭に浮かびました。
先生のお言葉にインスパイアされ、普段の練習からこの「引き出し調整」を行うようにしました。ボディと生身のモデルさんとでは感覚が異なりましたが、次第に要領を得て、受検当日までにはしっかりと調整できるようになっていました。
たいそうな文字数になりましたが、今回行ったお裁縫や工夫は、決して『大したこと』ではありません。
でも、本番の安心感と完成度のために『やっただけの事はある』とお伝えできる仕込みです。
長襦袢の準備に悩む皆様の、ご参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

