実技試験の持ち物準備、細かいところで迷いますよね。
「長襦袢には、普通の『伊達締め』と『伊達巻』、どっちを使えばいいの?」
結論から申し上げますと、どちらでも可(自由)です。
モデルさんの体型に合い、ご自身が扱いやすく、何より「仕上がりが美しくなる方」を選んで全く問題ありません。
今回は、普段の仕事では「伊達締め」派だった私が、試験本番でなぜ「伊達巻(紐付き)」を採用したのか。
そして、不合格を経て気づいた「長襦袢着付けの重要性」についてお話しします。
そもそも規定はどうなっている?
まずは『受検に際しての注意事項』で持参品の規定を確認しましょう。
伊達締め又は伊達巻 数:2本以内
種類:布製 金具付き又はゴム付き(シャーリング)は不可。
(持参は自由)という記載がないため、用意がなければ原則失格となります。
金具やゴムがついていない昔ながらの布製であれば、一般的な「博多織の伊達締め」でも「伊達巻」でも、どちらでもOKということです。
私がかかった「だてまきの呪縛」
私は普段の仕事(婚礼以外)では、慣れ親しんだ市販の『博多織の伊達締め』を使うことがほとんどでした。
しかし、ある対策講習(はこひだ講習)に参加した際、先生からこう問いかけられます。
『伊達締めと伊達巻だったら、伊達巻のほうが見栄えが違わない? きれいでしょ?』
この一言で、私は完全に「だてまきの呪縛」にかかりました。
「伊達巻の方が圧倒的に有利なんだ!」と思い込み、その日のうちにWEBで『伊達巻き 紐付き 短尺Sサイズ(2.3m)白色』を2本ポチッと購入しました。
【要注意】紐付き伊達巻を使う場合の「落とし穴」
もし私と同じように「紐付きの伊達巻」を受検に採用する場合、持参品点検の際に最大の注意点があります。
『持参品及び服装の点検のための準備』の際には、(中略)紐付きの伊達巻は紐が見えるようにし、
このように規定されていますので、点検時は必ず「紐がついていることが審査員にひと目でわかるように」配置しなければなりません。
(※下の写真は、私が実際に練習時に並べていた配置です。紐を隠さないよう注意しました。)

1年目の不合格で気づいた「長襦袢」の恐ろしさ
検定内容には『補整、長襦袢着付け(15分)』としっかり盛り込まれています。
しかし、普段から着付けの仕事をしていると、衣紋の抜き加減や腰紐の処理などは「当たり前のようにこなせる作業」であり、あえて重要視するほどのことではない錯覚に陥ります。
「なんとなくいつも仕事で綺麗にできているから大丈夫」
そう思って甘く見ていた結果……私は1年目、不合格になりました。
その後の着物の着付けばかりに気持ちが行きがちですが、実は長襦袢の「伊達締め(伊達巻)工程」は、大きな山場の一つだったのではと考えます。
2年目の対策:私が伊達巻で「あら」を隠した方法
2年目の練習では、タイムを計るだけでなく、「ゆっくり丁寧に整えて、しわを一切なくす」という練習時間を設けました。
その時の自分の技術のありったけを使って、「しわのない長襦袢着付け」を目指したのです。
結果として、私は「伊達巻」を採用して『〇』でした。
伊達巻のメリット:広い幅で「あら」を覆い隠す
実は、用意した長襦袢がモデルさんの体型に完全にあつらえたものではなかったため、着物からチラ見えしないよう、背部をほんの少し腰紐に挟んで調整(丈詰め)する必要がありました。
伊達締め(幅が狭い)では、その調整したごちゃごちゃした部分(あら)が隠しきれない不安がありました。
しかし、幅の広い「伊達巻」を使うことで、その「あら」をすっぽりと綺麗に覆い隠すことができたのです。
紐の処理は「脇」で補整に紛れ込ませる
また、紐付き伊達巻の最後の処理(結び目)は、背中や前ではなく「モデルの脇付近」にくるように巻きました。
すでに施してある補整タオルのクッション作用を利用して、結び目を補整の中に収めることで、ゴツゴツした外見にならず、すっきりとした綺麗なシルエットを作ることができました。
(※下の写真は、伊達巻と伊達締めの仕上がり比較です。)


試験会場で見たリアルな光景:「多様な解釈」と教訓
実際の受検会場を見渡すと、なんとなく「伊達締め」を使われている方が多い印象でした。
基本はどちらでも可なので、受検者の好みに寄るところが大きいです。
そんな中、「受検者の規定に対する『解釈』も本当に多様だな」とハッとさせられた光景がありました。
ある受検者の方が、長襦袢の腰上げをかなり多くとり、細い伊達締めで着付けていらっしゃったのです。
パッと見で「いいのかな…」と感じてしまうお着付けでした。
「あの長襦袢は、果たしてモデルさんの体型に合わせたものなのかな?」
「あの状態を『正』として、目標に向けて会場にいらっしゃっているんだな…」
規定を満たしていれば自由だからこそ、解釈は本当に人それぞれです。
そんな光景にしばし思考を持っていかれそうになった時でもありました。
受検後、改めてその時の事がふいに思い浮かぶと、「事前のサイズ合わせ(仕込み)」と「体型に合った道具選び」がいかに『仕上がりの美しさ』と『本番の心の余裕』を左右する大切なものだったかと、振り返っています。
後日談:受検を乗り越えて得た「現場での武器」
最後に後日談として、私が伊達巻を受検用に採用して本当に良かったと感じる「もう一つの理由」をお伝えします。
実は以前、実際のお仕事現場でお客様のレンタル品一式の中に伊達巻が入っていると、正直なところ「うわ、扱いが不得手だな…」と内心焦ってしまう自分がいました。
しかし、受検に向けて伊達巻と徹底的に向き合い、どうすれば「あら」を隠して美しく仕上げられるかを研究した結果、今では現場で伊達巻に遭遇しても全くうろたえることはありません。
お客様のお荷物が伊達締めであっても、伊達巻であっても、状況に合わせて自信を持って対応できるようになりました。
試験のための必死な練習が、そのままプロとしての現場力(対応力)に直結したのです。
まとめ:自分が一番美しく仕上げられる相棒を
伊達締めでも、伊達巻でも、行き着くゴールは同じ「しわのない美しい長襦袢着付け」です。
テクニックでカバーできる方は使い慣れたいづれのお品で全く問題ありません。
私のように、少しでも不安要素(あら)を隠したい、という方は、伊達巻を試してみる価値は十分にあります。
【おまけ】伊達巻は「締めやすさ」と「緩みにくさ」の事前チェックを!
モデルさんのお着付けを進める際、伊達巻(伊達締め)の扱いやすさも非常に重要なポイントになります。
素材が滑りやすくて緩んできてしまったり、逆に硬すぎて結び目がゴロゴロと響いてしまったりすると、手元がもたつく原因になりますし、仕上がりの美しさにも影響してしまいます。
練習から本番まで、余計な心配をせずに100%お着付けに集中するためにも、扱いやすく体にしっかりフィットする使い慣れた道具を準備しておくことは、受検者の立派な「備え」の一つだと思います。
▼ 私が実際の検定本番でモデルさんに使用した伊達巻はこちらです
練習から本番まで気兼ねなくガシガシ使える安価な万能品ですが、締めやすさと緩みにくさは抜群です。本番の限られた時間の中でも、滑ることなく一発できちっと決まり、スムーズにお着付けを進めることができました。どれを選べばいいか迷っている方や、手持ちの道具を見直したい方には、心強い安心材料としてとてもおすすめです。
ご自身の技術と、モデルさんの体型に一番フィットする相棒を見つけてみてくださいね。
ご参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。

