初めて1級着付け技能士試験を受検しようとした際、正直、勝手が全くわかりませんでした。
これまで経験したお教室系の試験のイメージに加え、検定ができた初期の頃に合格された諸先輩方の記事を見聞きしていたことも影響しています。
検定黎明期のことは私には推し量れませんが、合格率が半分を超えていた年があったからか、「持っているからといって技術力が高いとは限らない」といった、当時の私にはさらに推し量りがたい体験談を目にすることもありました。
そのため、「まあ、普段仕事で着付けをしているし、受かるだろう」と漠然と構えていたのです。
ところがどっこい。
真面目に向き合えば向き合うほど、自分自身が持ち合わせている現在の技術だけでは、到底対応できないような事柄と直面することになります。
合格した今の時点から言えば、「実営業と試験は違う」という言葉は控えたいと思っています。なぜなら、合格の域に達した所作と技術を自分自身に落とし込めた今、それが実営業で大いに活き、何の困りごとも起きていないからです。
しかし、合格する前。初めて対策講座を受講した際の私は、「え、知らないよ」「できないよ」「ってか、無理だし……」と、大きすぎる荷物を背負い込むことになりました。
立ちはだかった「5つの壁」
私が最初に直面し、自分の身体に落とし込むまで本当に苦労したのが、以下の5点です。
1. 起坐(きざ)の姿勢のたたずまい
これには本当に苦労しました。背筋を伸ばし、足元は絶対に開かない。自分自身が着物を着てお着付けをする際に、着物から襦袢がチラ見えしないような美しい起坐の姿勢。少し気を抜くと「あ、また足が開いてる…」の繰り返しで、身につくまでに時間がかかりました。
2. コーリンベルトの使用禁止(ひも使いへの変更)
私の着付け人生初のお教室がコーリンベルト推奨だったため、20年以上、私の相棒はコーリンベルトでした。それが禁止となり、腰紐を使った胸紐使いに変更することに。最初はにっちもさっちもいかず、完全な「お着物初心者さんレベル」からの再スタートとして取り組みました。
3. 前掛けポシェット等の使用禁止(服装の規定)
私は普段、腰回りに道具をしっかり装備するタイプではないので、そこを直す苦労がなくて本当に良かったとつくづく思いました。ただ、普段はシャツを外に出して仕事をしていることが多い私。公式な規定に明記されているわけではありませんが、検定という厳格な場に礼を尽くすため「しっかりベルトをしてシャツをINする」など、きちんとした服装で臨もうと決めました。そうなると「クリップはどこに留める?」「どう動く?」と、日頃の動線をガラッと変える必要があり、あたふたしないよう自分に落とし込みました。
4. 下前を合わせた時の「おくみ」を返す技術
過去に経験した2か所のお着付け教室での教えが色濃く残っていたこともあり、普段の実営業ではしっかり返せていない時もありました。この技術を徹底して円滑にできるようになるのは、抗いたくなるほどの関門でした。(もちろん、今はしっかり返しています!)
5. 帯回しの際の気遣いと「音」
実は受検前、私は帯を回す際の気遣いが少し薄く、実営業では「どさっ」と音を出してお仕事をしてしまっていた覚えがあります。しかし検定では、帯などの持ち物を丁寧に扱い、音を立てずに美しく回す所作が求められます。これまで無意識にやってしまっていた動きを修正し、静かで品のある所作を身体に覚え込ませるのにも、大いに苦労しました。
「実営業で困っていないのに」という抗う気持ち
人それぞれ、お着付けの方法は違います。私は大いに自己流度が高かったため、受検の際に大いに困り果てました。
正直なところ、最初はものすごく抗う気持ちがありました。
「だって、普段の実営業では全く困っていないのに。え、なんでわざわざそんなこと(検定仕様の動き)をする必要があるの???」と。
世間知らずで、大海を知らず、口ほどにもない技術力だったのに、更に気持ちも整っていなかった。だからこそ、迷走して突っ走ってしまったのが「不合格年」の私です。
礼を尽くし、自分に落とし込んだ先に見えたもの
不合格を経て迎えた合格年の練習では、目指すべき指針を改めました。
「検定側が求めているであろう、合格者のイメージ」に思いを馳せ、自分の動きをすべて検定仕様に置き換えたのです。自分自身に完全に落とし込めるまで、とことんやり抜きました。
結果として、それが自分自身のため、そして何より「お客様のため」につながっているという結論に至りました。
所作であれ、お着付けであれ、誰が見ても美しいと思えるものは普遍です。検定に向き合うことで、そういった洗練された雰囲気を自分の中に培えた気がしています。
最初は抗い、受け入れがたいかもしれません。けれど、「それでは絶対に合格できない」と悟った後、自分自身がどう検定に向き合い、礼を尽くすのか。それが合否の最大の分岐点になるような気がします。
今、壁にぶつかっている方の、何かのご参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

