1級着付け技能士の実技試験に向けて、着物や帯の準備は万端でも、意外と見落としがちで直前まで迷うのが「モデルさんの肌着(下着)や防寒対策」ではないでしょうか。
今回は、私が本番に向けて行った「モデルの肌着準備」についてのお話です。
極度の心配性ゆえに「そこまでやる!?」という対策まで行って臨んだ、私のリアルな体験談をご紹介します。
公式ルールの確認:「補整」に対する厳しい目
実技試験において、肌着や下着に関わるルールで最も気をつけなければならないのが「意図しない補整」を疑われることです。
試験要項の『注意事項』や『よくある質問』には、以下のように厳しく記載されています。
【注意事項より抜粋】
受検者は、『検定委員による受検者の持参品及び服装の点検」後、モデルに足袋、肌着と浴衣又はガウンを着用させること。
ブラジャー、キャミソール、タンクトップなどは補整とみなされるため不可とする。なお、補正(パットを入れているなど)されていない和装ブラジャーのみ使用可とし、『補整、長襦袢着付けのための準備』の前に検定委員が点検する。【よくある質問より抜粋】
Q.スポーツ用ブラジャーは使用しても良いですか?
A.『ブラジャー、キャミソール、タンクトップなどは補整とみなされるため不可とする。なお補整(パッドを入れるなど)されていない和装ブラジャーのみ使用可』となっており、スポーツ用ブラジャーは使用不可です。
これらの文言を何度も読み返した私は、「絶対に補整とみなされるような隙を作ってはならない!」と固く心に誓いました。
「紐通し」すら外した!私の過剰(?)な肌着対策
持参品リストには「種類:肌襦袢、裾よけ。ワンピースは可。(ふくらはぎが隠れる程度の長さ)」とあります。
そこで私はまず、身長150cm程度のモデルさんのサイズに合わせ、一番小さい「Sサイズのワンピース型肌着」を新調しました。
そして、ここからが私の極度の心配性が発揮されたところなのですが……
購入した既製品の肌着の背中側についていた「紐通し(衣紋抜き用のループ)」を、あえて外したのです。

うっすら小さい穴が見えますが、そこが外した紐通し箇所です。

※写真は受検後に洗濯してしまっておいたものを広げて撮影したため、しわが目立ってしまってすみません!当たり前ですが、受検前日はしっかりアイロンをかけて、たいそう丁寧にたたんでから本番に臨みました!(笑)
写真のボディもほぼモデルさんに近い高さに調整しており、規定通り「ふくらはぎが隠れる程度の長さ」に適している状態です。
「紐通しを外す」なんて、要項のどこにも記載されていません。余計な、必要以上の心配だったかもしれません。でも、本番の極度の緊張の中で、万が一検定委員の先生から「この紐通しの部分は補整効果があるのでは?」と物言いがついたら……想像するだけで心が怯えてしまいます。
「補整とみなされたら嫌だ」というリスクを1ミリでも減らすための、私なりの防衛策でした。
和装ブラジャーと、冬場の「ヒートテック」の工夫
次に、和装ブラジャーについてです。
実は「受検者持参品」のリストの中には、和装ブラジャーの記載はありません。「自由」という解釈でもOKなのかもしれませんが、私が一番気をつけたのは以下のルールでした。
『モデルに和装ブラジャーを着用させる場合、会場入り前の着用(自宅等)は可能ですが、会場のロビー、トイレ等での着替えは禁止です。
会場のロビー・トイレ等での着替えは施設側からの禁止事項でもある為厳守してください。守らない場合は受検ができないこともあります。』
『禁止』『厳守』という強いワードが目に飛び込んできます。
私はこれを「絶対に行ってはならないNG要項」と認識し、モデルさんには当初から「当日自宅でパッド無しの和装ブラジャーを着用し、確認してから家を出てきてほしい」とお願いし、当日の朝も再確認を徹底しました。
防寒対策は「下から脱げる」が絶対条件!
私が受検した日は12月。会場まではとても寒い季節でした。
モデルさんには防寒対策として、和装ブラジャーの上にヒートテックを着用して会場まで来てもらいましたが、ここでも一つ重要な事前のお願いをしていました。
それは、「下からスムーズに脱げるように、伸縮性のある首回りが広めのヒートテックを着てきてほしい」ということです。
会場で肌着に着替える際、上から被って脱ぐタイプだと、せっかくのヘアメイクが崩れてしまう恐れがあります。スムーズに下へ引き下ろして脱げる防寒着を選ぶことは、本番前のバタバタを防ぐ隠れた重要ポイントです。
実際の「お着替え」の流れと、見えない心配り
ここで、実際の会場での「お着替えの様子」を少し振り返ってみます。
まずは足袋です。会場では『足袋はモデルが自分で履いても、受検者が履かせてもよい』というようなアナウンスがありましたが、私は普段の練習通り、私自身の手で履かせる手順を崩しませんでした。
そしてお洋服のお着替えです。
ヒートテックの上には、同じく下から脱ぎ着しやすい「丈長めのワンピース」を着てきてもらっていました。
お着替えの瞬間、モデルさんは「ショーツと和装ブラジャー、足袋」という無防備な状態になります。周りも一様にそのような状況なのですが、そうは言いましても、広い会場で心細い思いはさせたくありません。
そこで私は、持参品である『浴衣(またはガウン)』をサッと広げてモデルさんを囲むようにし、周りから見えづらい「目隠し」の覆いを作りました。
その覆いの中で、まずは上半身を肌着に着替えてもらいます。
そして最後にモデルさんにスッと立ち上がってもらい、ワンピースとヒートテックを下へスルリと脱いでもらえば、ヘアメイクを一切崩すことなく、スムーズなお着替えコンプリートです!
まとめ:見えない部分の準備が「精神安定剤」になる
正直なところ、既製品の肌着の紐通しを外すことまで留意しなくても良かったのだと思います。
でも、何度も読み返した注意事項の文言が頭にインプットされ、度が過ぎた心配性になっていたのも事実です。
しかし結果として、実際の受検時に検定委員の先生からご指摘を受けたのは、「衣装敷のサイズ(※別の記事で書いた失敗談です)」に関することのみでした。肌着や下着に関しては一切ノータッチで進めることができました。
つまり、この私の過剰とも言える準備は、実技試験において全て『〇(可)』だったということです。
本番で余計な不安を抱えずに、目の前の着付けに100%集中するためには、こうした「見えない部分の徹底した準備」が何よりの精神安定剤になります。
一つの事例として、これから受検される方の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
【おまけ】私が実際の試験モデル用に選んだ和装ブラ
「モデルさん用の和装ブラ、結局どれを選べばいいの?」と迷われている方へ。ご参考までに、私が実際の試験に向けてWEBで一番安価に購入したものをご紹介しておきますね。
私が数ある中からこれを選んだのには、3つの明確な理由(絶対条件)がありました。
- パットの取り外しが可能であること(最優先!)
- 「過度な補整」と見なされるような複雑な裁断がなく、シンプルな作りであること
- 着脱がスムーズなフロントファスナーであること
特に実技試験では、下着による過度な補整は厳しくチェックされる可能性があります。そのため、「いざという時にパットが外せて、作りが極めてシンプル」という点が最大の決め手でした。
お値段もとてもお手頃なので、モデルさん用の準備費用を少しでも抑えたい受検生の方にはぴったりだと思います。どんなものか気になる方は、ぜひ詳細をチェックしてみてくださいね。

